雑誌の仕事に関わることになって15年が過ぎた頃から考え始めたこと。「私が本当にしたいこと」は何なのだろう…。
生活の糧としての仕事ではなく自分が心から喜べて、友人にも楽しんでもらえるものっていったい何? 年齢、経験、資金、能力、すべてを考えずに本当にしたいものは何?
そんな自問自答を繰り返していた時にひらめいたものは、音楽を通して喜びを分かちあいたいということでした。ときには天啓が人生の方向を変えるように、第一音に衝撃を受けて生き方が変わった人もいる。そういう場面に関わりたい。
バレエの脚本を書いて、作曲をしてもらい上演できたら…作曲はドイツ在住の指揮者・上岡敏之さんに、バレエの振付は熊川哲也さんに…など、夢というよりは妄想? とにかく芸術が生活とかけ離れたものではなく、生活の中に芸術がある状態を目指したい。それに関わりたいという気持ちがふくらんで、抑えようがなくなっていきました。
早く第一歩を踏み出さないと何もしないうちに人生が終わってしまう。ハードルは高くても今できそうなことから始めよう…。そう考えていた時に、河口湖の湖畔に小さなホールがあることを知りました。
100人収容のこのホールでなら音楽会を企画できるかもしれない。ピアニストさん、どなたに依頼しようかしら…、いえ、私は誰の演奏を聴きたいかしら?
若手のホープ、田村響さん。2007年、ロン・ティボー国際コンクールで優勝した彼に弾いてもらいたいけれど、さまざまなオーケストラと共演していて忙しそう。何年かして、もっとじっくりと成長した時に彼の演奏を聴かせてもらえるといいな。5年後か10年後に企画できるように準備しよう。 ……では、いったいどなたに弾いてもらえるのかしら?
そんな時に、音楽情報誌に宮沢明子さんのリサイタル情報を見つけました。久しぶりに宮沢さんのピアノ演奏を聴きたくて出かけた演奏会で、せめて連絡先だけでもうかがおうと思いマネジャーさんに会いました。演奏の依頼などは考えてもいなくて、ただ、いつか可能ならば…という気持ちでした。
→宮沢明子との出会い につづく